国際エンジニアリングアワード 『第11回ジェームズ ダイソン アワード2016』 国内審査通過5作品を発表!

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国内最優秀賞は、高齢者の外出を支援する、Communication Stickに決定!

JDA 2016 Facebook header

一般財団法人ジェームズ ダイソン財団は2016年9月8日、財団が主催する国際エンジニアリングアワード「第11回 ジェームズ ダイソン アワード 2016」 (以下、JDA) において、国内最優秀賞作品、ならびに国内審査通過作品の計5作品の決定を発表しました。JDAは、次世代のデザインエンジニアの支援・育成を目的に毎年開催されているアワードで、テーマである「問題解決をデザインする」アイデアを募集し、今年は世界22カ国にて同時開催しました。

今年の国内最優秀賞は、プロダクトデザイナーの三枝 友仁氏による作品「Communication Stick」に決定しました。介護施設管理者へのヒヤリングから施設管理者が被介護者に外出を推奨するのが困難な理由として「迷子」と「転倒」の2つがあることに問題を感じ、被介護者外出時に介護者と常にコミュニケーションが取れる手段として「Communication Stick」を開発しました。国内最優秀賞の三枝氏には、賞金2,000ポンド(約27万円*)が贈られます。

国内審査2位は、中央大学 理工学部精密機械工学科 助教 山田 泰之氏による「TasKi」に決定しました。農作業負担を軽減する解決策で、腕を長時間あげたままにして行う果実等の収穫作業のサポートを目的とした、腕への必要最低限のアシスト力を、電池不要、利用時間制限なしの、ばねの力で腕の自重を相殺する道具を開発しました。

国内審査3位は、株式会社OTON GLASS 代表取締役社長 島影 圭佑氏による、「OTON GLASS」です。文字を読むことが困難なディスレクシアの方や弱視の方を対象とした、読む行為をサポートするスマートグラスを開発しています。これにより、視覚的な文字情報が音声に変換され、読み間違える前に事前に音声で確認することや、読み辛い文字を理解することができます。

上記3作品を含む国内審査通過5作品は、今後、参加22カ国で第一次審査を通過した作品群とともに第二次審査に進み、さらに選考された作品が、財団創設者ジェームズ ダイソンによる国際最終審査に進みます。第二次審査において、ダイソンのエンジニアにより選出される国際TOP20の結果発表を9月29日(木)に、国際最優秀賞と国際準優秀賞の結果発表を10月27日(木)に配信する予定です。国際最優秀賞受賞者には、ジェームズ ダイソン アワード トロフィーと賞金約30,000ポンド(約407万円*)を、さらには、受賞者が在籍または卒業した教育機関に寄付金約5,000ポンド(約68万円*)が贈られます。また、国内受賞作品表彰式を12月頃に都内で開催する予定です。

JDAは、工業デザイン、プロダクトデザイン、エンジニアリングを専攻する学生ならびに卒業4年以内の卒業生を対象に、2016年2月18日~7月19日に渡って作品募集を行い、今年は参加22カ国より過去最多の約1,000の作品が集まりました。日本からは、高齢者社会、障害者、教育など、今の日本のみならず世界的にも注目されている様々なテーマに対する解決策が42作品集まりました。作品は全てJDAホームページ上で公開されています。

国内審査に、デザインエンジニアの田川 欣哉氏、およびフリージャーナリスト・コンサルタントの林 信行氏の2名が審査員を務めました。また、2013年度のJDA国際準優秀賞受賞をきっかけに起業し、受賞作品の筋電義手「Handiii」を開発しているexiiiが、JDA 2016のアンバサダーとして幅広く活動を行いました。

(注) *全て受賞時の為替相場に応じて換算。参考金額は2016年9月8日レートです。

 

JDA2016 国内最優秀賞作品 Communication Stick

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概要:介護施設生活において被介護者と介護スタッフをつなぐ新しい杖の提案。「音声からテキストメッセージ送信」「受信したテキストメッセージの音声読み上げ」「転倒時の位置情報通知」の3つの機能によって、外出における「迷子」と「転倒」の不安を解消し、被介護者と介護スタッフの両者にとって安心と安全な外出機会を提供。身体能力が低下した高齢者の生活の質を向上させたいという想いから、現在、施設や被介護者のニーズに合わせて対応できるようオープンソースハードウェアとして開発中で、2018年の製品化を目指す。

製作者:専門学校桑沢デザイン研究所デザイン専攻科プロダクトデザインコース 卒業、現 プロダクトデザイナー 三枝 友仁氏

作品概要の動画:https://youtu.be/mEKFaF4Bh-c

JDA2016 国内審査員 田川 欣哉氏よりコメント:

「お年寄りの行動範囲を広げ、家族の安心を確保し、いざという時に人命を救うという機能性を、杖を依代にしてうまく埋め込むことに成功している。取手部分のマイクに向かって話すユーザーの姿がごく自然に映るが、このような自然さは実はなかなか生み出すことが難しい部類の仕事である。ユーザーと道具の間の関係性、それらが一体となったときの絵姿を慎重に丁寧に検討したそのプロセスが奏功したのだと思う。ほとんどそのまま商用化できそうなリアリティも含めて、今後の展開が楽しみなプロジェクトだ。」

JDA2016 国内審査員 林 信行氏よりコメント:

「課題として焦点を当てた介護施設における「歩行困難者」という対象が持つさまざまな課題をよく分析した上で、どのような状態に持って行くことが理想化というゴール設定も素晴らしく、さらにそこで必要とされている解決案をきわめてうまくシンプルな形にまとめている。利用している技術がいずれも極めて実現性が高い技モノである点も評価が高く、価格が安価に納められている点も高く評価したい。」

 

<JDA2016 国内準優秀賞作品 TasKi>

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概要:腕を長時間あげたままにして行う果実等の収穫作業のサポートを目的とし、腕への必要最低限のアシスト力を提供する。使用者に寄り添った視線から,ロボットではない身近な道具をもってサポートしたいという想いで、「襷掛」や「+(足す)気」などといったネーミングに想いを込めた。シンプルな形、安価、より軽い素材で作ることを目標に、4年をかけた構想を形にした。本作品は農業のみならず、工場ライン等の産業分野などにおける問題解決につながることも可能で、製品化に向けて既に複数の企業から問い合わせがある。

製作者:慶應義塾大学大学院 理工学研究科開放環境科学専攻 修了、

現 中央大学 理工学部精密機械工学科 助教 山田 泰之氏

作品概要の動画:https://vimeo.com/171380491

田川 欣哉氏よりコメント:「農作業の身体負荷の軽減を、重装備のモーターやバッテリーなどを搭載することなく、バネやヒンジといったプリミティブな機構要素の組み合わせで実現した。人間の関節の動きの自由度を上手に確保・制限する設計は完成度が高い。背面から見た姿も軽やかでありつつ、しっかりと動作する安心感もうまく表現されている。」

林 信行氏よりコメント:「単純でありながら負荷の大きい労働をアシストする機械はこれまでにもいくつかの提案がありながら、なかなか普及に至っていない。重量や価格や電源管理や操作などの課題があった。本作品はそのことこそが課題と考え、極めてシンプルな解決案を提示している。用途は絞りこまれるが、毎年世界中で大量に行われている収穫作業を安価かつ低コストでバッテリー切れの心配もない形で解決しており農作業がロボットに変わるまでは、世界的にもニーズが高いと思われる。」

 

<JDA2016 国内審査3位受賞作品 OTON GLASS

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概要:失読症の父親と生活する中で開発を始めた本作品は、文字を読むことが困難なディスレクシアの方や弱視の方を対象とした、読む行為をサポートするスマートグラス。視覚的な文字情報を音声に変換する機能を持ち、視点と同一位置にあるカメラで、ユーザーが読みたい文字を撮影し、それをOCR(文字認識技術)で音声に変換し、読み上げることができる。現在は、9台目の試作品となる、OCR GLASS(機械による認識)とJINRIKI GLASS(人間による認識)の2台を年内には完成させて、複数のユーザーに検証してもらう予定である。最終的には製品化を目指している。

製作者:情報科学芸術大学院大学 メディア表現研究科 修了、

現 株式会社OTON GLASS 代表取締役社長 島影 圭佑氏

作品概要の動画:https://vimeo.com/175384517

田川 欣哉氏よりコメント:「自分の父の障害をなんとかしたいというモチベーションからスタートしたという。随所にリアリティを感じるプロジェクトである。常にユーザーと一緒に開発することで、チューニングを繰り返すことで完成度を上げるプロセスは評価できる。入力は視覚、出力は聴覚と、それぞれの感覚器の上に重畳実装する機能性を選別した部分にセンスとエレガントさを感じることができる。」

林 信行氏よりコメント:「日常で見かける文字をテキストとして認識することは、今後、確実に行われる技術開発の方向性の1つだ。本作は読みたい文字がどこにあるかがわかるディスレクシアや弱視者を対象者と設定したことで技術の実現性を高めた。また、ただ機能を開発するだけでなく、作品を違和感のない通常のメガネのような形状で実現し、利用者の気持ちへも配慮している点やネーミングにも込められた思いが、本気でつくろうとしていることを感じさせる。」

 

<JDA2016 国内審査4位受賞作品 Design for sound –Sound Microscope

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概要:可聴域外の音含む全ての音を人間が知覚できる音の顕微鏡の提案

製作者:東京造形大学 造形学部デザイン学科 川島 直己氏

作品概要の動画:https://youtu.be/S6YvSMqawfg

林 信行氏よりコメント:「普段、耳にする音の中にはさまざまなヒントが隠されているが、それらの音を分析するためのツールはあまりに専門的で使いにくかった。本作は目的に応じてレンズを切り替えながら分析する顕微鏡というメタファーや音の成分のデジタル変換をうまく活用することで、音の分析に関するこれまでになかった斬新なアプローチを提示している。それでいて作品としての造形的な美しさにもこだわっている点も評価した。」

 

<JDA2016 国内審査5位受賞作品 color2vibs>

color2vibs

概要:視覚障害者が、触っているものの色調の違いを、指先に感じる振動の違いとして識別できるツール

製作者:情報科学芸術大学院大学 メディア表現研究科 篠田 幸雄氏

作品概要の動画:https://youtu.be/g1DsBH6CPS4

田川 欣哉氏よりコメント:「色彩を3つの振動子に割り当てるというアイデアはシンプルで分りやすい。一方、形状については、ブロック形状ではなく、「触る」という行為によりフィットできる形状を深く検討する必要がある。」

 

ジェームズ ダイソン財団は2002年に英国で設立された、主にエンジニアリングやテクノロジー、デザイン分野における教育慈善団体です。現在は、英国を中心に世界各国の学校や大学等の教育機関、および学生や若いデザイナーへの支援活動を行い、日本では大学生へのエンジニアリングレクチャーや、主に中学校の技術分野で実施しているダイソン問題解決ワークショップを行っています。昨年、中小企業の部にて「キャリア教育アワード」経済産業大臣賞を受賞しました。ジェームズ ダイソン財団は様々な活動を通して今後あらゆる分野で活躍し、生まれ育った自国の経済を牽引する存在となりうるエンジニアやデザイナーの育成サポート、また将来を考え 始める世代に向けて科学、デザインやエンジニアの楽しさと必要性を伝える活動を世界各国で推進していきます。

JDA Facebookオフィシャルページ:https://www.facebook.com/jamesdysonaward/