低コストのメラノーマ診断用携帯機器がジェームズ ダイソン アワード2017
国際最優秀賞を受賞

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ジェームズダイソン財団(英国ウィルトシャー州マルムズベリー)は、同財団が主催する国際エンジニアリングアワード 「ジェームズ ダイソン アワード2017」(James Dyson Award, 以下JDAの国際最優秀賞を発表しました。最終審査員である、ダイソン創業者のジェームズ ダイソンは、低コストのメラノーマ診断用携帯機器、sKan(読み方:スキャン)を今年の受賞作品に選びました。

メラノーマとは、悪性黒色腫とも呼ばれ、欧米人に多く見られる皮膚がんの一種です。厚生労働省が実施した調査によると、日本におけるメラノーマと診断された患者数は約4,000[1]、新たに診断される人数は、年間100万人あたり約1020人で[2]、世界では、13万人を超えていると見込まれています[3]。通常メラノーマは早期の診断と治療によって治癒が可能ですが、毎年何万人もの人々がこの病気で命を落としています。

早期診断法は目視による検査に大きく依存しているため、精密とは言えません。より先進的な診断法は時間がかかる上に高額で、すでに大きな負担となる医療サービスに、さらなる負担がかかります。また、生検法を受けない患者は、がんの発見が遅れるリスクを負うことになります。

このメラノーマ診断の問題に対して、カナダのマックマスター大学工学部の学生4名が取り組みました。彼らの解決策sKanは、より安価で使いやすい診断方法として、早期発見によって患者の命を救うと同時に、医療サービスの貴重な時間とお金を節約することができます。チームには、ジェームズ ダイソン アワード国際最優秀賞として、このアイデアをさらに発展させるための賞金30,000ポンド(450万円[4])が授与されます。

ジェームズ ダイソンは次のように述べています。「広く入手できる安価な部品を利用することで、sKanは多くの人々がメラノーマを容易に発見できるようにします。世界中の人々の命を救う可能性を秘めた、極めて創意工夫に富んだ機器です。」

sKan は、がん細胞が、正常な細胞に比べて代謝率が高くなり、より多くの熱を放出する特性を利用しています[5]。 これは、例えば氷嚢などによって熱衝撃が加えられた場合、がん組織は非がん組織よりも速やかに熱を回復する ことを意味します。これにより、メラノーマの可能性が高いことが分かるのです。

sKanの内部には、精度が高く安価な温度センサーであるサーミスタが並んでいます。この並んだサーミスタを対象部位に当て、冷却後に周囲の温度に戻る過程を追跡します。サーミスタによる読み取りはデジタル化され、時間同期の平均化、温度変化の検知、空間的検証がその信号で行われます。結果はヒートマップおよび温度差の時系列プロットとして、検出事項の報告とともに表示され、メラノーマが存在するか否かが示されます。

メラノーマ診断には非侵襲のサーマルイメージング技術が存在しますが、高解像度の熱探知カメラを利用するために高額で、20,000ポンド以上の費用がかかります。一方、sKanのコストは1,000ドル未満と予測されています。

詳細の動画はこちらをご覧ください。

ジューラビンスキーがんセンターで胃腸腫瘍学サイトグループの会長を務めるレイモンド ウォン博士は、次のように述べています。「現在、病変がメラノーマかそうでないかを診断する方法は、医師の熟練した目に頼っています。その結果、患者が不要な手術を受けたり、メラノーマの発見が遅れたりする場合があります。sKanは、低コストで使いやすく、効果的な機器として、医療サービスで広く採用される可能性を持っています。」

sKanの開発チームは、次のように述べています。「ジェームズ ダイソン アワードを受賞できたことは、我々にとってこの上ない大きな成果です。賞金のおかげで、人々の命を救える医療機器の開発を続けることができます。このような素晴らしい機会をいただき、光栄に思います。」

チームがこの機器に託す夢は大きく、彼らはこの賞金を利用して、製品が米国食品医薬品局の認可を受けるレベルに到達するまで、繰り返し改良を続けようと計画しています。彼らは今後、この機器が世界中の医療現場で使われる日が来ることを切に願っています。

本作品の紹介を含む今年の国内受賞作品を表彰するセレモニーを下記日程で開催します。当日は、受賞者の表彰式と国内受賞作品の展示などを予定しています。取材を希望される方、出席を希望される方は、下記問い合せ先にご連絡ください。別途、ご連絡させて頂きます。

 

  ジェームズ ダイソン アワード 2017 国内受賞作品表彰式セレモニー

 日時 126日(水) 1830分~2030

 会場 NEWoMan Shinjyuku 5F スタジオ

 

 

[1]厚生労働省 平成26年 患者調査http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/xls/hyo.xls

[2]国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター http://ganjoho.jp/public/cancer/melanoma/index.html

[3] World Health Organization(世界保健機関)http://www.who.int/uv/faq/skincancer/en/index1.html

[4]参考金額:1ポンド=150円 英国発表時119日(木)の為替相場に応じて換算

[5] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3670775/#R5